マーサズ・ヴィニヤード

アメリカの北東部・マサチューセッツ州デュークス郡にマーサズ・ヴィニヤードという島があります。日本の石垣島とほぼ同じ大きさの島です。ケネディやクリントンなど歴代の大統領が愛した高級住宅地・別荘地でもあり、オバマ元大統領夫妻が3万6千坪の土地と邸宅を1100万ドル(当時でおよそ12億8千万円)で購入して話題になりました。
手話の街としても知られ、独特の手話が使われ、聴覚障がい者に理解のある街としても知られます。
島の住宅価格は平均で230万ドル(およそ3億6千5百万円)にもなり、富裕層が所有する家が多数をしめます。また、この住宅地は、夏になると、20,000人の島に十倍の20万人もの人が訪れるために、貸別荘として活用されます。貸別荘の値段は週6,500ドル(およそ103万円)で、高級リゾート地であることが分かります。
紛うことなき高級住宅地だね。セレブで良いんじゃないの?
元々、高級リゾート地ではありましたが、近年の資産インフレが起きる前は、普通の所得の人々もたくさんいました。2012年には、島民の40%が年収5万ドル未満でした。しかし、10年後には、この数字は23%にまで低下しました。逆に100,000ドル以上の収入がある人は46%とほぼ倍増しています。ちなみにマサチューセッツ州の警察官の給与は中央値が75,700ドル、教師の平均給与は51,057ドルほどで、100,000ドルにはとても届きません。住宅が高すぎて彼らが住めないのです。

AP通信の報道では住む家が無く、月に約6,000ドル(約96万円)の家賃の家に7人で家賃を分割して払う塗装労働者の話や、学生就労ビザで訪れた訪れたアルバニア人学生がコーヒーショップ2軒とレストランで3件の仕事を掛け持ちし、その収入の大半を家賃につぎ込む話が紹介されています。
そんなに家賃が高いと一般労働者は出て行かざるを得ないね
この街で必要な911(消防、急病、警察)オペレーターは11人と言われていますが、生活費が高すぎるため慢性的な人手不足になり、その人手不足の状況で長時間の残業が発生し、退職者が増えて、さらに人手が不足するという悪循環に陥っています。中には、低所得者向け住宅に入っていた住人が刑務官の仕事を得たものの、低所得者住宅に入るには所得が高くなるため、清掃人に職を変えざるを得ないという逆転現象も起きています。刑務官になって給料が上がっても、その給料では家賃が払えないので、結果として島に住めなくなるのです。そのため、刑務官も不足している状態です。いつの間にか、Airbnb(民泊仲介企業)が主導権を握る街になってしまいました。
高級住宅地化したら、非常事態に対応する人がいなくなるんじゃ本末転倒だね。
そのため、一部の住民は住宅価格が下がるよう宅地に税金をかける運動をしています。マサチューセッツ州では似たようなケースが他の地域にもあるとして州政府も65億ドル(約1兆3百億円)をかけて住宅対策に乗り出すことになりました。
アメリカの資産インフレが格差をまねき、生きていくうえで必要な公務員や労働者を追い出してしまうという事態にアメリカでも注目が集まっています。これでは本当の豊かさとは言えない気もしますがいかがでしょうか?
当ブログにお越しいただきありがとうございました。
引用:High housing costs on Martha’s Vineyard forces workers out | AP News