珍しい賃金抑制
激しいインフレを伴いながらですが、アメリカの労働者の賃金は大きく伸びています。カリフォルニア州では今年、16ドル(2,544円)だった最低賃金が20ドル(3,180円)に引き上げられました。州内のファーストフード店には既に導入されています。今後、清掃人なども引き上げられる予定です。これに伴い医療従事者の最低賃金は25ドル(約3,975円)に引き上げられる予定でした。影響は42万6千人にのぼります。
アメリカの賃金の高さにあらためてびっくり‼
しかし、この医療従事者の賃金引き上げが延期されました。理由はカリフォルニア州の赤字財政です。全米で最も人口の多いこの州の収入は468億ドル(約7兆4千億円)不足すると見られており(ちなみにカリフォルニアの全体予算は2,979億ドル(およそ47兆4千億円)です)、ニューサム知事は支出の削減に乗り出しているところです。中流家庭の子どもの大学の学費支援1億1千万ドル(おそよ180億円)の削減や、高騰する住宅支援11億ドル(およそ1,800億円)、州立刑務所の大幅な見直しなど削減をしました。また、課税所得が100万ドルを超える企業への臨時増税も行います。ですが、当初削減予定だった貧困家庭への介護費用予算削減は中止するなど、紆余曲折を経て今年の予算案が可決されました。
治安悪化が激しいのに刑務所予算大幅削減するんだね
アメリカにはMedicaid(メディケイド)というものがあります。子供や高齢者、妊婦、一定の要件の家族を介護している者などが入れる低所得者向け医療保険です。カリフォルニア州では3人に1人が利用していると言われています。しかし、このメディケイドを使った診療をしてくれる医師は少なく、低所得者は大きな病気であっても病院を探すのに苦労するか数か月の待機を受け入れざるを得ない状況です。そのため、州政府は医師会にメディケイドの患者を受け入れるよう説得をしています。
それに対し、医師会はこのメディケイド予算の増額を強く要求しており、昨年、知事は54億ドル(およそ8千6百億円)の予算増額を約束しました。そして州政府は2回にわたって増税に踏み切ったのですが、それでも州の財政は苦しく、メディケイドに回せる予算は少額で、当初より医師に支払われる診療報酬は低いものでした。
業を煮やした医師会は住民投票を呼びかけ、メディケイド予算の増額とメディケイドの患者を診る際の報酬アップを要求して、州知事や議会と対立をしています。
どの国も医師会は強いね
その対立の結果、予算捻出のために、当初アップされる予定だった医療従事者の最低賃金の引上げを凍結しました。最低賃金引き上げには20億ドル(およそ3,2百億円)かかるからです。そして、今年、州政府の見込み収入が3%以上上回った場合、最低賃金引き上げに踏み切ると表明しました。
カリフォルニアの医療従事者の団体と医師会はこの行方を固唾をのんで見守っています。2024年10月か2025年1月には最低賃金の引き上げが行われることが期待されています。
あくまで徹底して収入と支出を見ながら医師と交渉してるんだね
医療と税金の在り方は非常に難しく、センシティブな問題ですが、皆保険制度を持つ日本もレベルは違えど同様の事が起こる可能性もあります。庶民にとっては医療制度が脆弱なアメリカですが、こういった詳細が表に出て、予算を巡って具体的な議論がなされるところは、アメリカの良い面も出ているようにも思いましたがいかがでしょうか?
当ブログにお越しいただきありがとうございました。