限界ギリギリのサラリーマンのセミリタイアを目指す海外経済・投資・雑記です。

地元と東京を行き来する日々。自分の興味があるアメリカ経済や投資、普段の雑記的なことを備忘録的に書いていきたいと思います。

【雑談】なぜ、オーバーツーリズムなのに京都市営バスは赤字なのか

京都のインバウンドへの印象と実態

2023年訪日観光客が2300万人を超え、インバウンドの直接消費額が5兆円を超えました。自動車に次ぐ輸出品(海外観光客は輸出にカウントされます)になり、半導体関連や電子部品を除き日本での存在価値が増しています。私はこれは良いニュースだと思っていますが、ネットなどでは反対意見も見受けられます。その第一が観光公害(オーバーツーリズム)ですね。文化の違いによってマナー違反も見受けられます。国によってはトイレットペーパーを流さない国もあり、日本のトイレも清掃にはいったらトイレットペーパーの山だったという話を実際に聞いたことがあります。
YAHOOニュースでは「「もう我慢の限界」 春の京都“観光公害”で地元民うんざり、迷惑行為に「ここはテーマパークじゃない」の声 もはや規制手段しかないのか」との記事(高田泰氏執筆(フリージャーナリスト))において、観光客のごみのポイ捨て、渋滞、マナーの悪さをを指摘するとともに、京都市バスの混雑ぶりを報道し、「「観光客数に上限を設ける」など抜本的な対策を検討する時期に来ているのかもしれない。」という言葉で締めくくっています。

別の記事でも観光公害の最たる例として京都市バスの混雑ぶりが指摘されていたこともあり、調べてみました。実は京都市へのインバウンド観光客は日本交通公社の調べでコロナ前の、ピークであった2019年度でも京都全体の観光客のうち17%を占めるに過ぎません。沖縄では観光客に占める訪日外国人の割合が30%ですし、インバウンドが市バスの大混雑の原因というには早計に思います。なお、宿泊客に占める訪日外国人は約半数となっています。ですので、結論から言うと、混雑の原因の8割は日本人が原因となります。宿泊費の高騰も話題になりますが、こちらは訪日外国人の影響が強いと言っても差支えがないでしょう。ですので、YHOOの記事で書き込む「観光客数の上限」というのは日本人の日本国内の移動にも規制をかけることになり、市バスに絞って言うと適当な結論ではないことが分かります(ごみのポイ捨てなどに関しては別の議論も否定しません。世界最古の文化財を多数持つ日本文化は消費するものではなく次世代に継承すべきものが多数ありますし)。

実は大赤字の京都市営バス

この表は京都市が公表している表で、営業係数100とは100円を得るためにいくらかかるのかを示しており、営業係数が100なら赤字でも黒字でもないということになります。コロナの影響がない平成30年までは営業係数が100を切っており、黒字であることを示しています。コロナになり営業係数が100を超え、赤字に転落したことを示しています。つまり、市バスは観光客がいないと成り立たない事業であることが、はっきりとわかります。また、コロナ前ですら、黒字路線は最高でも46%に過ぎず、オーバーツーリズムと言われる時期においても過半数が赤字路線となります。

これらの状態に拍車をかけるのが少子高齢化の問題です。敬老乗車証制度というものがあり、高齢者は大幅な割引でバスを利用できる制度があります。各地にあるシルバーパスなどと同趣旨の制度です。この制度を京都市は大幅に見直しを進めています。京都市の公表資料では「制度開始から約50年が経過し、平均寿命は男女ともに11歳延び、対象者数は8万人から32万人に増加するなど、社会情勢の変化に伴い、市税負担額も、開始当時の3億円から令和3年度には52億円に増加しており、このままでは令和14年(2032年)度には58億円となることが見込まれ」とされています。市バスの売り上げは令和4年度が市バスが178億円、地下鉄が257億円ですから、50億円を超す市税負担額は小さくありません。

誤解を恐れずに言えば、高齢化社会で京都の人も他の地域と同様に高齢化し、市バス、地下鉄の運営にいくばくかの影響を及ぼしていて、その反面、増える観光客が市バスの収入を増加させている面もあります。もちろん、高齢者には何の罪もなく、古い世代から京都を継承し支えてこられた方々であり、何よりも誰もが歳をとるのですから、単に収支のバランスのとり方が重要だと思います。

前述した、京都の観光客のうち訪日外国人は17%であることも踏まえると、実像はマスコミの報道とはだいぶ異なる面が見えてきます。京都の問題は日本の問題の縮図でもあり、「分かりやすさ」ばかり求めるメディアの報道に惑わされないことが重要だと思いました。インバウンドに対しては私も功罪両面があると思います。私個人としてはトライ&エラーで、試行錯誤しつつ、うまくバランスを取れるようにすると、いつか日本経済や地域社会と観光客の両者が得をするようになるんじゃないかと、希望的に思いますが(正直、日本国内のエネルギーでもっと元気になって欲しいとも思います)。。。いかがでしょうか?

あと、インバウンド収入上位の国はアメリカはじめほぼ先進国だった調べもありますので、リンクを貼っておきます。

shiina-saba13.hatenablog.com

当ブログにお越しいただきありがとうございました。
引用:京都市HP(写真を含めて)