限界ギリギリのサラリーマンのセミリタイアを目指す海外経済・投資・節約・雑記です。

40代サラリーマンです。地元と東京を行き来する日々。自分の興味があるアメリカ経済や投資、節約術、子育て、普段の雑記的なことを備忘録的に書いていきたいと思います。

【相続税】話題の路線価問題一審敗訴の節税マンションを見てきました

不動産の相続税評価に路線価が使えない

 

令和元年8月27日の東京地裁の判決(令和元年8月27日、東京地裁の判決、平29(行ウ)539号「相続税更正処分等取消請求事件」)が話題となりました。相続税評価額として路線価を使用したところ、路線価ではなく不動産鑑定士の鑑定での相続税評価のやり直しとなり、不服を申し立て裁判になったのですが、国税庁側が勝訴しました。
税理士や会計関連、法人の団体も様々な意見やレポートを出しています。

経 緯

H20.8.9  次男の子供を養子縁組
H21.6.26 長男が被相続人の会社の代表取締役就任
H21.1.30    杉並区の不動産を8億37百万円(銀行借入 6億3千万円)で購入
H21.10.16   遺言書作成(公正証書
H21.12.25   川崎市の不動産を5億5千万円(銀行借入5億5千万円、妻から4,7百万借入で購入
H24.6.17     被相続者天に召される
H24.10.17   遺産分割協議終了
H25.3.7    相続税申告
H27.4.22     税務署による不動産鑑定
H28.4.27  税務署より更正処分等
H28.7.27     国税庁へ不服申し立てしたものの棄却へ
H29.11.11   裁判へ

 

流れはざっとこのような感じです。通常、相続不動産の評価は相続税法22条に「時価」と定めらており、その「時価」は「路線価」となっています。ただし、特別な場合を除くとしてあり、この物件が特別な場合に該当するかが争われました。
路線価による評価は 杉並区の不動産を8億37百万円 → 2億4万円
          川崎市の不動産を5億5千万円  → 1億3,366万円
         

 ※川崎市の物件は売却をしており、5億1,5百万円で売れたそうです。

専門家の批判

この判決について、専門家からは雑誌やレポート、個人や事務所のブログなどで「通常は路線価を使うように通達しておいて、時に鑑定額を使うのは、何を基準にして良いかわからない。過去にもタワーマンションで市価の1/5での評価での相続などいくらでも例があり、なぜ、いま、この件に適用されるのか理由が判然としない」という批判が多い感じです。ただ、「無理しすぎた」との意見もいくつかありました。

 

今更ですが、実際に物件を見に行きました

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途中にあったいきなりならぬカミナリステーキ(物件とは無関係です(^^;)

 

そもそも、物件を見てみたいと思いました。川崎に行こうとしたら、あまりに対象が多く、一方、杉並は判例では中央線約徒歩5分、44戸の居住区と教育施設となっており、杉並を探すことにしました。最初は、簡単だと思っていたのですが、全然見つかりません。まんだらけに売りに行くおもちゃ抱えて歩いちまったい!で、ネットで目星をつけていた物件を見て、ようやくたどり着きました。駅から300mもないので極めて便利です。周囲の環境、道路への取り付け、陽当たり、買い物、その他、これがあるのと無いのじゃ、価値が全然違うじゃん(これ書くと一発で分かってしまうので伏せますね。病院とかちゃちなもんじゃないです。)的要素を含めて、杉並区最良物件の一つと言っても良いでしょう。近所のラーメン屋さんも美味そうです。

ああ、これ、「時価は2億円ほぼきっかり」って言っちゃうと確かに抵抗ある人いるだろうな、という感じです。川崎の物件からして約5億円で買って約1億3千万円で申告し、5億円で売約しているのですから、この辺りも、法的に正当性(二審以降の判決を見ないと断言できませんが)があると主張しているとはいえ、一般納税者の中には少し考えてしまう人も確実にいるでしょう。保有しているのは相応の保有する理由もあるのでしょうし。

 

特別な場合に指摘された理由

 

これは、被相続人が90歳になってから企業診断などを行い、孫を養子にし、杉並、川崎とアクティブに銀行借り入れを利用しつつ、物件を購入し、借地権の設定から何からスムーズに進めており、かつ、相続人は誰もこの物件に住んでおらず、証拠として出された銀行の稟議書にも(相続対策のため)の明記されているため、完全な相続税回避スキームとして見なされ、国税庁が伝家の宝刀を切ったと言われています。これを、相続人が住んでいる居住物件なら、全く違った判断にもなった可能性も指摘されています。額で言えば地価日本一の銀座の鳩居堂は借地権を利用した相続税対策で有名ですが、鳩居堂には厳然たる実態があってこそ、額の多寡に関わらず、認められるのだと思います。
要は、無理しすぎ、ひょっとして90歳過ぎた相続人の子供たちに何らかの意図があったのか、あるいは亡くなった被相続人が何もわかってなかったんじゃないの?的な発想が、国税官に芽生えた可能性もあります。

 

私も物件を確認した感想は「お金があればすぐ買える物件ではない」のは分かります。そうそう売りに出る物件じゃないです、あれは。

無理しすぎたんですね。しかも3年半(通常3年を超えれば売却しても相続目当ての物件購入とは見なされない)というタイミングですから、いろいろ、国税のデリケートな部分を刺激しちゃったんだと思います。逆に公共事業でもあって、8億の物件を2億円で役所に強制買収されたら困りますしね。

良し悪しはともかく法律なんて、はっきり言って後追いで解釈が変わったりするもんなんでしょうね。税法もそうなんでしょう。タワマン節税は、被相続人の死後、早々に売却するケースが目立ち、3年縛りが出来ました。2審、最高裁まで行くのか、どのような判決になるのか分かりませんが、実際の物件を目にして、その利便性を確認すると、相続税回避スキームって凄いなぁと感じ入った次第です。